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2006年 06月 16日
敢えて疑問を呈したい、今回の新事業、ライツは難しいぞ
ファンが、ご贔屓のメーカーに対してあれこれ言うのが自由であるように、メーカーも自身の戦略で考えをユーザーに問うというのもまた自由である。ここのところ、イメージング事業においては、カメラを主軸に筋肉質に転換し、良い方向で進んできたなと思っていた。
そんな中で、ある発表がされた。一般紙にも少し出ていたので、オリとしてはそれなりのプレスリリースをしたのであろうが、長年のファンとしてこれは疑問である、、、、それとも素人にはわからない展開、展望があるのだろうか、、、それなら良いが、、私的愚痴と提言を少しばかり



新事業は、写真・音楽のコンテンツ融合型エンターテインメントサイト「olio(オーリオ)」の立ち上げと言うものである。

リンク先を見てもらえれば、一目瞭然であるが、このサイトを立ち上げて、
1.Olio Photoサービス
  よくある、写真をアップロード出来るサービスに加えて、これまた写真集や、アルバムを作るサービスが加わったサイト

2.Olio musicサービス
  能書きは別にして、要は音楽配信サイト

3.Olio remixサービス
  上記、音楽と写真をリミックスして楽しむ無料ソフトも用意して、これを楽しんだりするサイト(あのm-robeとかいまいちコンセプト不明なのに搭載されていたのを大々的に行う形か)

と言うものである。

 あれこれぐだぐだ言う前に(苦笑)今回のイメージングのV時回復および、今後の安定的成長を発表出来るまでに一気にたどり着いた基点とも言うべき、去年の中間決算時に発表された戦略のプレゼンテーションに立ち戻ってみたい。

 あのとき、イメージングの出直しをするにさいしてオリは現行事業をマーケットの成長性が大きいものと小さいもの、オリの得意とするオプトデジタル事業に近いもの、そうでないものに分けて残すべきもの、注力すべきものの切り分けを行ったはずだ。その中で、現行赤字でもオプトデジタル事業に近いものは残し(最たるものがコンパクトデジタルカメラ)、逆に売り上げ規模が小さいものの、黒字を出していたもの(MO事業等)は撤退を決めたはずである。

 その撤退組の中に音楽プレーヤー事業も含まれていた。カメラ以外で残しためぼしいものはボイスレコーダー事業だけだったはずだ。(オリは意外ではあるが、ボイスレコーダーは、パールコーダーの時代からこの業種ではメジャープレーヤーである。またオリの医療事業や、この先のユピキタスネットワーク構想等でもこの音声記録技術が不可欠なのは私も理解出来る)要は、オプトデジタルもしくは、イメージング以外の医療、ライフサイエンス事業等に関連がある少数のものをのぞいてきっちり切り捨て、整理した形だった。

 その中で、この発表である。フォトサービス事業はわかる。しかし、音楽配信や、リミックスなどを何故にオリンパスがやらなければいけないのか、それも敢えて新事業と銘打ってやらなければいけないのかが、大いに理解に苦しむのである。この配信技術等に素人のわからない展開があり、将来のユピキタスネットワーク構想にでも直結していくのだろうか(苦笑)

 私は、たまたま仕事上のクライアントに様々な立場でライツ(ここでは音楽等の著作権及び同隣接権の意味)に携わる会社と一緒に仕事をした経験があるが、経験上、この音楽配信等のサービスは全くのしろうとが参入してどうなるものでもないと言う考えだ。仕事上、クライアントのビジネス理解のために勉強を余儀なくされた私でも、この部分は未だに難しいものは当時の知己に教えを請わないとよくわからない、そんな世界である。

 先ず、作品としてはそれを制作する立場(広義の意味で、作者等)、それを流通させる立場の人たち(プロダクション等)、そして兼任される場合もあるが流通させる手段、経路を押さえている人たち(出版社、レコード会社、放送局諸々)、そして多くの場合はそれを再現する手段を押さえている人たち(プレーヤー等、レコードも、プレーヤーも作っている場合もあるが、)とさまざまな立場の人たちがこれに関与している。

 まず、これらの立場の人たちはそれぞれが各々のサービス、商品により対価を得るわけである。それだけであればこれら様々な業種の人が群がる訳はない。通常得られる「自己のサービスの対価」に加えてここには旨みがあるのである。それが著作権他、原盤権やその他著作隣接権という様々な権利(作者の著作権以外は、私のようなこの業界外のものから見ると、それは権利というより、利権の様なきもするが)による報酬である。またややこしいのは、これらの権利が誰かに100%帰属すると言ったものでなく、分割も可能であるのでこの「分け前」を巡ってさまざまな駆け引きが存在すると言った「独特の世界」が広がっているわけである。

そして、(あくまでこの業界を外から見た立場として)ある一つのコンテンツがユーザーに届く(=金に換わる)迄の間にいかに「自分で良質のコンテンツ(=権利)を見つけ出す、もしくは作り出し」「あわよくば、他人の権利も自動的に分け前を取れる仕組みを作り」「これらの権利の報酬を如何にきっちり徴収出来るか」が腕の見せ所であり、ここを取り込めないなら決して「おいしい商売」ではない。

 また、先ほどの関与者の立ち位置と、このもうけどころを考えれば一番「仕組みさえ作ればおいしい立場」のは、コンテンツをしこしこ制作する立場や、それを再現するもの(それはPCでも、音楽プレーヤーでも、劇場でも何でも良いが)という、「クリエイティブな人たち」「実際にユーザーに提供する人たち」というある意味一番ベーシックな部分を請け負っている人でなく、その真ん中でこれらの流通を牛耳っている人たちなのである。(こういう利権システム、構造が良いかどうかの議論は別)

 従って、従来のレコード業者達はこぞってネット配信に進出し何とか「とりっぱぐれ」を防ごうとするし、appleもネット配信をおさえにかかるのである。はっきり言って、オリンパスがユーザーサービスのまあいくつかあるなかの「彩り」としてやるならともかく、新事業などとプレスリリースしてやるのはおかしい。カメラや、顕微鏡を作っている素人さんが首を突っ込む領域では無いと思う。ただ単に、仕組みを作ってそこから得られる「口銭」程度のものをもらうくらいなら新事業として面白くもない。かといって、そこから先の自前コンテンツの取り込みや、ライツと言った新事業なりの「旨み」をとろうとすれば、まず間違いなく泥沼に陥るだけだろう。

 恐らく、m-robeも含めてこれをどうしてもやりたい、もしくはプロモをかけている人たちがいるのかもしれないが、これをビジネスとして立ち上げようなどと言うパワーがあれば、その分他にカメラに割いた方が有効である。もしくは、これに投資する費用を、デジカメの販促費用にでも「経費」で使った方がよっぽど良いと思うがいかがだろうか?

 どうしても、コンテンツがとりたければ、キャノンさんの「新世紀展」ではないが、本業の写真の分野で新人等の発掘、写真界自体の発展のために金を使う方がよっぽどかっこいいと思うし、またライツを本気でメーカーの立場から考えたいというのであれば、この本来最も優遇されるべき作者、制作者が必ずしも権利上、優遇保護されていないライツビジネスに風穴をあけるよう様なフォトグラファー向けの画期的なビジネスモデル等を作ってくれれば良いのでは無いかと思う。これをオリンパスユーザー限定でやれば、プロフォトグラファーもかなりとりこめるのではないだろうか(笑)。





 

by Hiro_Sakae | 2006-06-16 22:23 | その他オリ絡み


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