2006年 08月 17日
先日、これでダストリダクションも完成かと、リアルタイムダストリダクション(シャッターを押す都度ぷるぷるを行う仕組み)特許を紹介した。(興味のある方は、オリ特許関係のカテゴリへ) しかし、続きがあった。前回が、電源利用のピークを回避する形でミラーアップする都度ダストリダクションを行う仕組みの特許とすれば、これを実現するためのSSWF(スーパーソニックウェイブフィルター)の改良に関するものだ。併せて、この特許を読んで、今使っているE-330等でスイッチを入れてランプが点滅している間、SSWFが何を行っているのかもわかった。C社のDSLRにゴミふるい落とし機能が付くようであるが、「こだわりのオリ」が到達したダストリダクションは、「付いたゴミをふるい落とす」から、「撮影の都度、ゴミを付けない」レベルに到達したと言える。 それでは、我々が普段何気なく使っているSSWFと、その進化形について書いてみる。私見であるが、ここに至るオリの膨大な周辺特許も含めれば少なくともダストリダクションに関しては、極めて大きなアドバンテージを持ったと言えるだろう。 【公開番号】 特許公開2006-217536 【公開日】 平成18年8月17日(2006.8.17) 【発明の名称】 防塵機能付き光学装置及び電子撮像装置 SSWFの振動は一種の圧電素子にて行われているわけであるが、実際のところ圧電素子の微振動の動きだけで、ダストをふるい落とすほどの動きはしていない。素人考えでもそんなにぷるぷる根本から動かしてしまうと、精度に影響しそうである。 実際には、この振動させる時の周波数で、光学素子(ガラス面)を共振させることにより全面にダストをふるい落とすだけの振動を行わせている様である。光学素子(実際にはガラス面を含むユニットだが、以下光学素子とする)を共振させてダストを落としているわけである。また共振の動きの場合、ガラス面が(極端に言うと)波打つ。輪ゴムや、ギターの弦をビーンとはじいたところを思い出して欲しい、弦全体にぶるぶる振動するが、波の動きの端にあたる1点は全く動かない点が存在する。この点をSSWFを固定する支点にする。このことによって、全体はぷるぷるすらが、SSWFを固定する点がむやみにぶれる力がかかるのを防ぐ。精度を確保しつつ、全体を振動させるミソがここにある。 と書くと、なるほどとなってしまうが、実際には光学素子がどの周波数で都合良く共振するのかと言う問題がある。SSWFが起こす微細な共振のレベルになるとどんなに精度を高めた部品でも実際に共振する周波数はわずかに異なるらしい。ましてこれをくみ上げた光学素子ユニット段階でのそのユニット毎の共振周波数を一定にするのは不可能のようである。 オリの初期の特許では、この組み上げた段階で共振周波数を測定し、各々それに合った周波数に調整してSSWFを組み上げると言う形だったようだ。確かに、本来この技術が考案された医療関係等の特殊機器であれば、こういうのも可能だろう。しかし、カメラのように台数が出るものにそのような調整は出来ないし、また、使用時の状況(温度等)等も変わってくる。 従って、E-systemに搭載されているSSWFでは、電源オン時にある一定幅の周波数で振動させ、その時点で共振が認められる周波数を都度検知し、その周波数で即座に共振(ぷるぷる)をさせると言う動作を繰り返している。あの電源オンして1秒弱の点滅の間にそういう動作を毎回しているというわけである。 そこで、今回の特許である。前回紹介したように毎回撮影直前にSSWFを稼働させ、ダストをふるい落とすとなると、ミラーアップ動作直前のわずかな間に行わなければいけない。また電源消費も極力落としたい。前回の特許ではこの時のSSWFの周波数は所与となっていた。 ここでは、更に一歩進め、従来の駆動方法を駆動1とすれば、これに比較して更に短い周波数帯域且つ、小さめの振幅を起こす駆動2と言う省電力の駆動方法を組み合わせ、この駆動2をミラーアップ毎に行う。従来の電源オン時に駆動1と両方行う形である。 駆動2はミラーアップ毎に行うので、駆動1程大がかりな振動は必要ない。また直前の駆動1での共振周波数等をデータとして持つことにより、当たりを付ける周波数の幅は駆動1より狭めることが出来る。(個人的には、駆動1の周波数をそのまま使っても良いかと思うが、文中によれば、電源オンしてからの時間経過の中で、わずかでも共振周波数が動く可能性があるとのことだ。オリレベルでは看過し得ないのだろう) これにより、駆動2では、ぷるぷるにはいる前の当たりを付ける部分の時間とぷるぷるの時間が大幅に短縮され(且つ電力消費も大幅に低減できるため)電源オン+撮影毎のダストリダクションが完璧に行えるという仕組みである。 加えて、ここには直接関係ないが、オリの場合は、この光学素子ユニット自体が、ガラス部分を蓋にして密閉されており(従ってローパスフィルターを含む光学素子自体は物理的にダストが付かない)且つ、ガラス面は通常使用ではダストが残存しても目立たない程度に距離がとられているわけである。 また、ハウジング内のシャッターの動き、ミラーの動きによる空気流の動きとSSWFではじかれるタイミング、それから想定されるダストの行き場所への粘着部材の配置方法等これに絡む特許の数々の一部もここにご紹介したようなものがいくつかある。 とまあこんな感じだ。 オリらしい異常なこだわりだと片づけてしまえば話が終わってしまうが、(笑)前にも書いたように、ライブビューBのさらなる進化や、将来のEVF化等デジタルの正常進化形を考えればハウジング内をさながらクリーンルームのようにきれいにする(或いは出来る技術を持つ)というのは、極めて重要だと思うのである。レンズ交換の度に従来のダストリダクションを稼働させ、撮影でシャッターを押す都度、ミラーが上がり撮影する直前にダストを飛ばしてくれる、、究極のダストリダクションの完成だと思う。今回は無理でも、いずれ搭載される技術であろう。
by hiro_sakae
| 2006-08-17 13:33
| オリ特許関係
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