2006年 12月 02日
日経の商品番付に思う、その他与太話、オリの戦略
 日経の1日付朝刊に今年の商品番付が発表され、横綱に「デジタル一眼レフ」が選ばれた。これに加えて、今のオリはと言う話し。



 ちなみに、これ以前でデジタル一眼レフで三役に登場したのは、ニコンさんの「D70」とのこと。デジタルカメラ関係はカシオのQV-10から前頭まで含めれば、結構入っているがそういう個別機種でなくカテゴリーとして、入ったのは初めてしかも、横綱は初めてである。

 DSLRの普及率が世界一である日本でも、出荷ベースで見ると今年は20%台の成長で富士総研等のレポートを見ると後3,4年かけて順調に推移し、日本では2010~11年頃にフィルム一眼レフ時代の国内最高出荷数の130万台前後に到達するとのことである。現状の普及スピードで行くと、欧米が1~1.5年遅れ、アジア主要国、東欧等がそれに続き、その他地区はさらにそれに遅れて続くという形である。

 特にフィルム一眼レフ時代に1960年から1980年後半に向けて一眼レフの普及が全世界的に駆け上がっていた時期と比較すると、
・フィルム一眼レフと比べて技術革新等によるモデルチェンジサイクルが短いこと
・当時は一眼レフ市場として無視し得たロシアを中心とする旧東側の市場の存在
・同じく、中国を筆頭にアジア市場の急拡大や世界全般的に一眼レフ市場となりうる新興国の成長
が現在ではあり、全世界的に見ればフィルム一眼レフを普及しまくった時代と段違いに購買市場の懐自体が深く広くなっている可能性がある。既に先行しているデジカメ自体がフィルム時代では考えられない数の年間出荷数を出しペースは落ちたものの下落する気配がない。

 また、ここでオリのカメラ販売の内日本のシェアが1割にも満たないと言っているが本来はこれがむしろ正常で、フィルム末期の出荷国別シェアを見ると業界平均でも1割強が日本で後は海外宛輸出である。カメラが輸出に依存しているのは変わっていない。そんな中でもやはりオリの欧州のシェアは高く、業界では確か欧米が3割程度で均衡しているのに比べてオリは4割を超えている。

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 さて、そう言う中で今回番付にDSLRが選ばれたわけである。電機メーカー等の新規参入や、ようやく一般家庭でも手が届くと言うところに値段が下りてきたといったあたりが受賞の理由である。特にカメラが趣味でない家庭等でも、手を伸ばしてみようかという対象になってきたということであろう。ここを読んでいる様な人には違和感があるかもしれないが、最近はブームの後追いというのでなく、ブームの少し先(興味ある人は当然知っているが、世間的には知らない人が恥ずかしいと言うところまでいっていない)あたりを選考している様なので、むしろここに選ばれてからが、一般にばーっと拡がっていくとも言えよう。
 「カメラ趣味でない人に売れてもしょうがない」と思う人がいるかもしれないが裾野は広いに越したことはない。その人が興味を持つかもしれないし、その人が一家に一台のビデオの乗りで買ったとしても、それを息子さん、娘さんが興味を持つかもしれない。かつて親の持つカメラに憧れて、或いはそれをきっかけにカメラに興味を持った人もいるだろう。(笑)

 DSLRの世界は私の様な「カメラが趣味の人間」にすれば数年前から始まっている世界である。しかし、ここで過去の大きな流れを俯瞰して見ると、
・キヤノン、ニコンがいち早くフィルム一眼レフからのシフトを進め市場を立ち上げ
・既存大手メーカーの機種が曲がりなりにも全部出そろったのがE-300の出た2004年の秋。
・しかし、その後も淘汰やプレーヤーの入れ替えが進み、
・キヤノン、ニコン、ペンタックス、オリンパス他の既存メーカーにソニー、パナと出揃ってそれぞれ機種投入が完了したのがようやく今年、2006年

と言うことだろう。
そして、プレーヤーの入れ替えは終わったものの、結局この間トレンドで見れば、

・市場を創ったキヤノン、ニコンで8割以上を占めるという寡占体制は微動だにせず
・その中でも、キヤノンのシェアが着実に増え、
・市場の5割程度をキスデジファミリー1機種で占めるという特殊状況

は、結局何も変わっていない。そう言う意味では事実上市場を創設した二強が牛耳る市場に入れ替わりしながらようやくコンペティターが出揃い、これから一気に普及が進むという一般紙の扱いの目線の方がむしろ妥当とも思えるのである。結局太宗は何も変わっていない、参加者が増えた、それだけの事だろう。

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 ソニーも、いわゆるミノルタの継承から脱皮して次の展開が出来るかの正念場はこれからだろうし、パナも今はあくまでブランド戦略上の位置づけとして好調なコンデジの世界シェアアップに注力している。パナはこのままいくとデジカメで世界1割越えは射程に入っているのでここが見えてくれば当然DSLRも台数を狙ってくるだろう。パナはSDカードを軸に最終的には自社のAV機器(テレビ)へ導くためのポータルの様な位置づけをカメラ、ビデオに持たせている。パナの高精細TVで画像を鑑賞しようかという人間にやはり自社のDSLRを売りつけたいし、逆にDSLRをてこに高精細画像を存分に楽しむためにTVを売りたいだろう。キヤノンさんがプリンターをセットにしているようなものだ。

 ペンタックス=サムスン連合でのサムスンの力を日本ではとかく軽視しがちである。サムスンは、効率性を考え合理的な判断で「日本市場を捨てている」だけで全世界的に見れば強敵である。特にDSLRが世界市場規模で拡大基調に入ればサムスンの市場開拓力、セールスパワーは無視できないものとなっている。韓国ではデジカメシェアはサムスンがトップを握ったと聞いている。自社製のデジカメで自国の市場でトップを握れるのは、コダックが米国で凋落した今、日本以外ではサムスンしかいない。登載しているシュナイダーも昨今の若い人には無縁かもしれないが、世界的に見れば(欧米等)カメラファンには名の通ったブランドである。

 そして、先ほどのパナとオリンパスが組むフォーサーズである。オリンパスは、今年の日本市場の後半の勝負を敢えて捨てる判断をした。周回遅れで来年以降プレーヤー勢揃いの中で全世界規模で競争が激化する前の前哨戦を見送った感じだ。

 私は、この際あっさり見切り来年に一気に勝負を賭ける道を選んだオリの戦略は、あながち間違っていないと思う。恐らく既にリリースされているE-330のキャッシュバックや、E-1が本格的に流通在庫も払底し始めている現状や撮像素子のリプレース時期等も考えると、オリのボディに関しては恐らく第二章スタートと共に来年中に全てを入れ替える文字通りの「乾坤一擲の総力戦」に打って出る公算が強い。社内では、恐らく営業サイド等からは、多少不完全でも新機種であればそこそこは捌けるだろうし、早く出してくれと言う意見もあったことだろう。他社でいくつか、リリース後供給が間に合わないと言う事態を招いているケースがこのフォトキナ以降で発生しているところをみれば、オリの営業だけこの判断をおうように受け入れたとは考えられない。経営側の熟慮の上の決断であったのだと思う。

 従って、我々の期待とは別にオリンパスの牙城とも言うべき欧州にリソースを集中(E-400)し、その他はあっさり勝負を下り、来年のPMAを皮切りに新機種を全機種総入れ替えで順次投入していくと行くのがオリの戦略だとすれば、次期E-1が秋頃になるというのも(逆に言うと普及機の第二章スタートを優先させるのも)うなずける話しではある。また、E-330も入れ替えるとなれば恐らく来年パナも次期L-1の投入が考えられるだろう。また、せこい話しであるが

・恐らくキヤノンのキスデジは従来の投入パターンから言って来年のリプレースは無い。
・ソニー、ペンタックスがぶれ補正、ゴミ取りに続く目玉の新技術が出てくる可能性は少ない。
・ニコンは、良くも悪くも手堅く勝負し、おおこけすることもないが大化けもなく手堅く2位堅持

と考えられる。要はフォトキナの裏年でもあり他社からあっという新機種は出ないはずだ。恐らく他社は今年の新機種で一気に自社シェアを広げそれを足場に来年シェアを固めていき、再来年以降の発射台を高くしていくと言う戦略だったのだろう。しかし、何度も書くが思惑通り足場を固めて票を伸ばしたのは、みんなが崩さなければいけなかったキヤノンという想定外の事が起こってしまったのである。(汗)

 と言うわけで、今年本格的なシェア大変動のチャンスであった盟主キヤノンの大黒柱キスデジの世代交代という節目に結局大きな変動もなく、こうして年が暮れようとしている時「デジタル一眼レフ」の盛り上がりがようやく社会的トピックとして今年の横綱に選ばれたのは象徴的に思った。あせることはない。これからだなと言う感じである。
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by hiro_sakae | 2006-12-02 23:22 | その他写真関連


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