2007年 08月 22日
そして敢えて言いたい。フォーサーズこそ無謀な高画素化は自殺行為である。
  フォーサーズが誕生する前にE-10と言うカメラがあった。これはこれで評価を受けたカメラだ。2/3インチで4MP.これをフォーサーズに換算すると16MPである。巷間フォーサーズのレンズ設計の限界が16MPでこれぐらいは行くのではないかという一因にもなっている。
  私は、16MPはあくまで設計上の限界値であり、実際には画素数に関しては余裕を持って12MP程度に押さえるべきではないかと思うのである。「これ以上、どうしても高画素が必要な場合はどうするのか」。それは、より大きなフォーマットで対応すべきである。少なくともフォーサーズの範疇では無い。私の考えは、フォーサーズが35ミリ一眼の機動性小型を維持した上で現在、「35ミリフィルムのクオリティも維持する」となった場合に欠けているのは画素数でなく、もっと他の部分を詰めないいけないと言うものだ。

 コンパクトにまとめようと思ったがかなりの長文になってしまった。しかし、ここを間違えて「優先順位が低い」高画素化などに迷い込んで欲しくないし、少なくともユーザー側でそこに追い込む様な事はしたくないと思ったからだ。どれどれ、、と興味のある方は、、



1.35ミリフィルムとの比較

 そもそも、35ミリフィルムを代替するには最高でどれぐらい画素あれば良いのかと言うのを考えてみたい。高解像度のスキャナを使えばいくらでも画素数は増やせるがそれは意味のないことだろう。色々ネット上にも資料があるが、最近デジタル一眼レフでも紹介されたこのHPを今回は参考にしよう。

 これを見ると、各フィルムでのRBでの解像度の画素数があり真ん中あたりのグレーのゾーンがそのフィルムの解像度と同等の空間解像をDSLRの画素数に置き直したものである。これをみると、漠然と「35ミリフィルム相当の解像度は確保したいよな」と言っても予想以上にフィルムの感度によって解像度にばらつきがあり、フィルム感度と解像度に負の相関関係の曲線が(アバウトだが)引けることがわかる。

 ここで、現行売られているDSLRの最低画素である6MP機を見てみよう。見てわかるとおりISO100のフィルムとの比較ではフィルムの方が圧倒的に優位に立つ。しかし、ISO200ではちょぼちょぼになり、ISO400では6MP機ですら、フィルムの解像度に追いついている。それ以上の高感度フィルムではDSLRの方が良い結果となる。35ミリフィルムではISO100以下のベルビアしか使わないと言う人からみれば、6MP機などは、「何じゃこりゃ」となるだろうが、ISO400以上のフィルムをメインに使っていた人から見れば「これで十分じゃないか」となる形だ。

 では、このグレーの空間解像度を目安にISO100をカバーするとしたらどのレベルか?見ての通り12.5MPでここを串刺しにしているのはニコンのD2Xである。ニコンが乾坤一擲でこのカメラを作る際に12.5MPで良しとしたのはこの辺を計算してのことかもしれない。これで見る限り12.5MPあれば、少なくとも現行35ミリフィルムの殊「解像度」に関しては過不足無くカバーできると言えると思うのである。

 ちなみに、フルサイズのEOS1-Dsはこれで見る限り35ミリフィルム水準を超えている。では中判と比べてどうか?この続きがサンプル数は少ないものの別のページに掲載されている。これで見ると、6×4.5のISO100レベル相当。今回20MPオーバーになるとこれを上回るがISO50のベルビアには及ばない。ちなみに、これでみるといわゆる4×5や、8×10には当面追いつけそうもない。(苦笑)

 「そうか、少なくとも35ミリ一眼レフでまかなえた用途を満たすには解像の部分は12MP程度あれば良いのはわかった。しかし、それ以上の画素を何故求めてはいけないのか?コンデジでも10MP超えているのだからいいんじゃないの?」という疑問がわくだろう。そこまで必要にならないとしてもあるに越したことなかろうという議論である。これについては、今までも色々議論されているとおり、回折現象を考慮しなければいけないからだ。

2.回折限界から見た考察

 これにかんしては、実はお盆休み前からKさんという方と議論をしていて、今般ご自身のHPでこの回折に関する文章をまとめられた。リンクの許可をもらったのでリンクする。ここのHP自体はフォーサーズの議論とは直接関係ないものの、この後を読み進めるに当たってここをご一読頂くのは有用であると思う。

 先ず、回折限界自体の深い意味はここでは省略する。アバウトに言えばフォーマット等一切関係なくレンズの絞り値が決まれば、それ以上は解像できない限界が存在するというものである。これはレンズ側をいくらいじっても避けて通れない光学レンズの持つ「宿命」の様なものである。従ってある絞り値が与えられれば、自ずと回折限界として最小の解像力が決まり、それに対応する様画素をならべていくとすると、「ある絞り値での限界画素数はフォーマットの大きさで決まってしまう」というのは揺るがせない事実である。

 では、引用したHPの二つ目のグラフを使って、フォーサーズで12MPとした場合の回折の限界を見てみよう。これでみるとF5.6となる。従ってフォーサーズではF5.6が12MPピークとなりこれを過ぎると徐々に回折の影響が出てくるというわけだ。ちなみに、フルサイズで12MPはどうか?丁度2絞り分絞ったF11が回折限界となるわけである。まず、これを頭に入れておくとしよう。

 次に、35ミリのレンズを思い出して欲しい。普通は開放は甘く、絞るに連れ先鋭となり最高性能をたたき出し、また絞りすぎると甘くなると言う推移をたどるはずだ。一方で、レンズの解像度が回折のみ影響を受け他の収差が全くないスーパーなレンズであれば本来は開放が一番先鋭になるはずである。しかし、そんな理想のレンズは無い。むしろ収差等の回折以外の解像度を下げる要因は絞れば絞るほど改善される。つまりここに収差等の影響と、回折の影響のトレードオフが発生するわけである。これをZFプラナーで図示したのが、上記のHPの次に出てくるグラフである。こちらに関してはグラフ自体を引用することの許可を得たので下に貼ってみた。

c0036985_1254915.gif


これで見るとZFでピーク6μmをつけ開放では11μm。このピークはキヤノンの8M機20Dのピッチとほぼ同等である。キヤノンのAPSはフルサイズ比1.6:1なのでフルサイズ換算だと約2.5倍24MP程度か。12MPのフルサイズセンサーが見あたらないが、11MPのコダックのKAIセンサーが丁度9μmである。これから類推するとフルサイズで12MP以上をZFがたたき出しているのはF2.8~F11の4段分。それ以外は使えるが実際は12MP画素がなくても解像を受け止めることは可能だという形である。

デジカメで10MPと言うと別に絞り値がいくつであろうが、出てくる画像は10MPの画素数の画像が出てくるので私もうっかり「いつも10MPの解像度を持った画像」が出てくると思っていたが、画素数10MPとはそのシステムのレンズが最高解像度に達した時に10MPであるというのが正解の様である。ZFのプラナー自体は駄レンズというわけではないだろう。しかしZFの標準プラナーでも、12MPの解像力を超えてフルに満たしているのは4段ということだ。また、ここからもキヤノンのフルサイズ20MPちょい超えというのも理にかなったものと言える。従来の35ミリレンズの延長線上での高性能レンズでは上記の様に12MPではレンズの性能が無駄になる部分がかなりある一方で、25MP以上にしたとて今度はレンズがそこまで必要とせず、無駄な細分化となってしまうからだ。(上述のただ解像度を上げてスキャンして30MPフィルムだとあると言っても意味がないのと同じ理屈)

4.フォーサーズはこのフルサイズとの回折限界の差をどうクリアーしているのか

話を戻すと12MPの回折限界がF5.6。フルサイズより2段早く来る形だ。先ほどのZFの様なカーブを書けば、右側の性能劣化曲線は二絞り分左側にシフトする。そして、これはいくらレンズの方で工夫しても改善されない。このままでは、フォーサーズは12MPは確保できても、絞りが2段上限が使えなくなる。これは使い勝手でどうなんだろうか?

先ず、絞りを絞る側はフルサイズ比2段狭まる。しかし、絞りを絞る目的→被写界深度を得るという観点からするとフォーサーズは同一画角では2段被写界深度が深くなる(ぼけない)。従って、フルサイズがF11をピークに、F16で回折の影響が無視できず、F22が絞り上も限界と言うことであれば、同様の効果を得るためには、F22の2段落ち→F11で事足りる。すなわりF5.6をピークに、F8で影響が出て、F11が限界でこれ以上ははっきり落ちるとなっても実用上は問題ない。

問題なのはむしろ、有効な絞りの幅が狭まる問題である。開放絞りの有効範囲が同じであれば確実に使える絞りの幅が2段縮まるからだ。
これに対するオリンパスの回答はZDの専用レンズの設計にあると思う。専用レンズの設計はなにも新しいフォーマットとテレセントリック性に配慮しただけではなく明るさそれも、実際に実用になる絞りの明るい方の限界を極力伸ばすというのが必要だからだ。先ほどのZFのレンズで言えば、極力右下がりの性能曲線を水平に近くそれもできるだけ下の方で描く様にするわけである。結論から言えばこれで2段を埋めることは難しいだろう。実際にはここで1段詰めるというのを考慮しているのではないだろうか。物理的に同クラスで一段明るくするアプローチに加え、同一性能をたたき出すのに一段明るくても出せるとかそういうところだ。

絞りの幅が実質一段選択の余地が狭まる代わりにメリットは何か?一つは同じ被写界深度を得るためには2段明るい絞りで撮影できると言う形だろう。フルサイズで100mmマクロでF8の被写界深度が欲しい時、同画角の50マクロでF4までいけるところだ。

もう一つは、周辺と中心の解像度差を縮めると言うところだろう。先ほどのZFのグラフも中心解像度での比較である。画素は平面で広がっている。実際に12MP相当まで達する解像度が出る面積を上げると言うところだろうか。

そして、これらを達成するためにZDが設計精度をフルサイズの2倍におき、MTF曲線他フルサイズの倍の密度で評価をしているのは周知の通りである。回折限界が避けられないものと想定し、フルサイズを基準とした場合にそれより小さいフォーマットにする以上、この性能曲線をフォーマットの小さくなった分改善しないといけない。逆にここの改善無くして(=従来のままで)フルサイズの代替云々というのはやはりおかしい。テレセントリック性以前の問題として欺瞞である。

5.では、何故そこまでしてフォーマットを小さくしたのか。

・35ミリの代替としては12MP程度で解像度は不満無し
・この程度であれば回折限界からくる絞る側の使い勝手も変わりないのもわかった
・絞り幅、総合性能はレンズの能力を倍に上げることで追いつけるのもわかった
しかし、何でそんな苦労をして(実際、フラグシップ機の更新の遅れがそれを象徴している)までフォーマットを小さくしたのか?と言う疑問が残るだろう。ここでは、これを次から書いてみたい。

6.テレセントリック性確保は直進性だけが目当てではない。

まず、第一なのはフィルムとセンサーの特性の違いである、テレセントリック性の確保がある。これをオリ基準で確保するのをフルサイズのセンサーでやったらばかでかくなってしまうというのがそもそもの始まりだ。その前にはE-10で、フルサイズの1/16のセンサーでも愚直に作ったらフルサイズとさしてかわらぬレンズの大きさになってしまったという過去がある。何れにせよ、上記の様な、フィルムに対して周辺画質まで性能を上げていこうと思うなら尚更、このテレセントリック性を確保しながら画質的にぎりぎり譲れるサイズまでフォーマットを小さくしたとも言える。

そして、このテレセントリック性確保のために、フォーサーズ特許を見ると周辺部等でセンサーに入る入射角の許容範囲等を決めている。これはテレセントリック性確保と同時に「レンズからセンサーに入る入射角等の条件が揃えられている」と言うことを意味する。

このテレセントリック性が確保されていることと、レンズ毎の光線の入射角が一定範囲内で揃うというのは何を意味するのだろうか。

一つは、35ミリフィルム性能へ追いつく矛先が解像力から画質そのものへシフトした際にセンサーの奥行きを使うアイデア(3CCD等)を採用する場合にこの周辺でも奥迄光が届くと言う性質は有効に作用するだろう。平面で3色を拾うのが今のベイヤーだとすれば、これを改善するには、もう一次元、すなわち奥行きを使うか、オリが別に行っている時間(時分割)という次元を使うしかない。このうち奥行きを使いやすいというのは今後効いてくると思うのである。

また、画素に対する集光能力を更に高めるために周辺部と中心部でもっときめ細かく差異を付けたマイクロレンズを付けるとしよう。ZDのテレセントリックと言っても許容範囲があるからである。この際にも光線の入射角が一定範囲に収まっていればいるほど、スペシャルな調整が出来るはずである。(光線がレンズによってまちまちな入射角な場合と比較すれば良い)

レンズ交換式一眼レフ。すなわちセンサーとレンズを比較すれば交換の効かないセンサー側で全てのレンズで最適となる様な設計をするよりも、交換するレンズの方でセンサーに常に一定の光線をあてるようにするほうが理にかなっているのは当然とも言える。従って、フォーサーズのレンズがテレセントリック性を意識した結果、レンズ毎の光線の入射具合も粒が揃う形になるというのは今後センサー側の改良にとってプラスに効くと思うのである。

7.DSLR特有の機能付与の為

オリのダストリダクション、ぶれ補正、或いはその高度化等フィルムの時には無かった機能、装置がDSLRには付けられる。そのスペース等を今後も確保しつつ小型、機動性を確保するには撮像素子は小さいに越したことはない。単にスペース上の問題の他、それを動かす事も考えれば小さいに越したことはないからだ。特に、今後高速連写サポート等のセンサーの前後動によるAFあるいは、LV,EVFを見据え常時センサーが作動する場合の発熱問題の装置付与等を考えればスペースの問題、駆動の問題を含めてセンサーが小さいことは利点となるはずである。

最後に

オリンパスが、35ミリ一眼レフOMの後継としてE-systemを位置づけた場合その目指すものは高いに越したことはない。しかし、例えば上記のセンサーの様に小さい方が良いもののやみくもに小さくするわけでなく、フォーサーズのサイズに落ち着いた様に、画素数に関しても「フォーサーズシステムの全体性能を最高にする均衡点」としての落ち着きどころがあるような気がする。そして、個人的には撮像性能で「35ミリフィルムのもつ性能」との落差を考えた場合、画素数でなく他の所の弱点を詰めることが先決であり、それが今後の強みになるのではと思ったからだ。このままの画素数アップは、ピーク解像力はあがるかもしれないが、コンデジの様な味気ない、メリハリのどんしゃりになってしまう危険があると思うのである。

とまあ長くなったがこの辺で、、
最後に今回改めてこのことを考えるきっかけを作ってくれたKさんに対しては改めてこの場を借りてお礼を申し上げる。どうもありがとうございました。
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by hiro_sakae | 2007-08-22 14:02 | four thirdsの思想


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