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2008年 11月 08日
【特許関係】フォーサーズにおけるEVF導入時のAFについて
  ここで、紹介してきたとおりフォーサーズにおけるEVF(ここではEVFのみならず、光学ファインダーレス仕様という意味)機のAFに関しては、レフ型カメラの特徴である分光構造(ミラーとハーフミラーの組み合わせで現状撮像部、ファインダー部、AFセンサー部に分光している)を利用して、位相差AF方式でのライブビューを種種考案している。

  現状の光学ファインダー用の光路を確保した上で位相差やってライブビューやってとなると、確保しなければいけない光路が多すぎてかつてのオリのライブビューAやソニーのライブビューのような撮像素子の画像をライブビューする形がとれなくなってしまうが、EVF機であれば、光学ファインダー用の光路が一本減るので、まあ素人目に考えても位相差AFとライブビューの併存は一気に可能になるからだ。

  むしろ、レフ構造を使ってのライブビューの場合は、撮像素子でライブビューしている最中に位相差AFセンサーにも光を分光しつつという分光構造をいかに洗練されたものにするかというところが肝となる。私が、仮に将来EVFが導入されることになっても恐らくこの「レフ構造」を持ったカメラ(フォーサーズに限らず)の有用性というのは失われることはないと考えていることも含めて書きたい。




 従って、今までのフォーサーズ特許は、つまるところAF方式自体に関しては従来の位相差AFセンサーを使うものかもしくは、位相差AFセンサーとコントラストAFを併用するものであった。どちらにしても現行ある方式をそのまま使う、組み合わせるという形だ。

 今回は、更に一歩踏みこんで位相差AFセンサーに仕掛けを組み合わせることにより、位相差AFとコントラストAFのハイブリッド方式の際に、従来のコントラストAF方式よりも同AFの合焦スピード自体を大幅に高速化させようというものである。

【公開番号】 特許公開2008-268815
【公開日】 平成20年11月6日(2008.11.6)
【発明の名称】 自動合焦装置

というもの。ここでは詳細は省くが概略はこうだ。
コントラストAFはピントの精緻さの一方で、ピントがはずれている場合にそれが前ぼけなのか後ろぼけなのかがわからない。したがって前後に動かしてコントラスト値の変化からそれを検知する。山登り方式と言われる所以だ。

これを解決して位相差AF並に移動被写体にも追随する工夫としては先例があり、要は分光して、撮像素子よりわずかに前ピン、あるいは後ピンにした他の撮像素子を用意することで前ぼけなのか、後ろぼけなのかを瞬時にわかるようにしたものである。しかし、これを仮に仕込むとなると大がかりとなるし、これにプラス位相差AFは搭載出来ない。

そこで、オリンパスが考案している方法は
1.位相差AF用のセンサーを撮像素子対比わずかに前ピン(もしくは後ピン)となるようにわざと配置する。
2.位相差AF用センサーから、従来使っている位相差信号以外に、コントラスト検出信号も取り出せるようにする。(但し、これは排他的である。)

従って、これに撮像素子自体のコントラスト検出値と組み合わせることによりAF方式としては
1.AFセンサーのコントラスト値と、撮像素子のコントラスト値を使った超高速コントラストAF
2.位相差信号のみを使った、従来通りの位相差AF
の二つのAF方式が出来上がる。これは明示的に切り替えられる他、オートも可能である。

オリの説明によれば、デフォルトは新型の超高速コントラストAFを想定している。そして移動体撮影で、暗い被写体等でコントラストAFでは追随が困難な場合は位相差AFで食らいつくというのを想定しているようである。オートでやる場合のこの辺の切り分けは一例を示すにとどめている。

位相差AFセンサー自体が現状では測距範囲が、ミラー上のハーフミラー部分の面積やカメラ底部のスペース上の問題等で現行では制約を受けているが、現行より大型且つ広範囲のセンサーを登載出来る可能性が高いのは他の特許で触れたとおりだ。また、そういう大型センサーを搭載するとなると、小さい撮像素子であるフォーサーズが生きてくるのも同様である。

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レフ構造の利用による、位相差AFか?コントラストAFか?を超えて更に次のAFを模索する動きは何もオリンパスだけではない。昨日公開されたニコンさんの特許は、光学ファインダー形式ではあるが、ライブビューAの様なセンサーを仕込んでこれをAFに活用している。
すなわち、AFで被写体をキャッチした時にこのセンサーでキャプチャーした画像をパターン認識用の画像としてキャプチャーして、これを追っかけAFに使うというもの。詳しい説明は省くが、この追っかけAFは例えば、ボールを次々とパスする人を撮影する場合にAさんからBさんへとボールが移動すれば、AFも移動する。Aさん、Bさんを追いかけるのでなく、「ボールを持ったプレイヤー」を次々と合焦していくという事が可能になるようである。(これはこれで、ニコンすごいなと思うが、、)

私が気付いていないだけで、恐らくオリ、ニコンだけでなく、キヤノンも、ソニーも考えているかもしれない。
また、ここではAFの高度化という観点でとりあげたが、オリの別特許に見られるように逆にコントラストAF方式のみで十分となればスクリーン部にもう一枚撮像素子を配置して2枚同時に撮像出来るような構造とその合成技術により、飛躍的なダイナミックレンジ拡大等に振ると言うアイデアもあるだろう。

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本来撮像面(フィルム面)にしか入らないTTLの光を直前で分光出来るという構造。そしてこの段階では光はまだアナログであるので、電子的なもの以外にメカニカルな駆動も必須となるここの仕組みの数々は、(公知になっているものもたくさんあるものの)日本の光学機器メーカーの技術の固まりとも言える。マウントや形式の継承というまあビジネス上の理由を差し引いても今までのカメラの技術進歩において一眼レフが生き残ってきたのは、光学ファインダー云々ではなく、この一眼レフのレフレックス構造そのものが非常にポテンシャルを秘めているのでは無いかと言うことだ。

ひるがえって、オリンパスのE-systemというものを考えた時に、小型軽量の分野を中心にマイクロフォーサーズが大きく進展するだろう。ただ、より小型軽量にするために捨てた部分それは、光学ファインダーでなく、文字通り「レフ構造」なのだと考えた場合、その得失というのは特に中上位機においてはわからない部分が多い。

例えば、上質のEVFがオリマイクロ機に搭載されそれが思いの外好評で売れるとなれば、改良小型化されたツイン千鳥AFとそのEVFを移植した、
E-420版EVF機というのも作れるだろう。オリマイクロのモックアップのような超小型にはならないが、EVFをメインに使い且つ松や竹のSWDをツイン千鳥AFでストレス無く使いたいと言う人にはそっちの方が良いという人もいるかもしれない。

私が、フォーサーズとマイクロの趨勢を考える時に、一番困惑するのが

フォーサーズ VS マイクロの趨勢 = 光学ファインダー VS EVFの趨勢

という図式で考えられがちなことである。フォーサーズVSマイクロの趨勢は

レフ構造を持つカメラVSレフ構造を省いてフランジバックを詰めたカメラ

であり、それに伴うフォーサーズのフランジバック長以下をカバーするレンズが小型軽量化することと、ボディが薄型化することがその本質である。ファインダーにおいては、「マイクロにはEVFしか搭載出来ない」というのは事実であるが、フォーサーズは光学ファインダーのみしか搭載出来ないわけではない。EVFが売れるとなれば、フォーサーズのラインナップの中でEVFを搭載し、出来ればレフ構造ならではのアドバンテージを持ったものを作ってマイクロと共存すれば良いことだ。

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と考えれば、私はオリンパスがフォーサーズと、マイクロの立ち位置でそれぞれが二つの山を作るのでなく、一体でE-systemを形成するということも、またE-system総体としてはあくまでフォーサーズをメインで続けていくというのは理にかなっていると思う。

従って、以前書いたように今回レンズ入れ替えでももうあまりフォーサーズレンズのマイクロでの互換性云々というのは気にしなくなってしまった。フォーサーズはフォーサーズで使えば良い話だ。(笑)

そして、私がここまで脱線するのは、、別記事に続けることにしよう。

by Hiro_Sakae | 2008-11-08 09:11 | オリ特許関係


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