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2005年 10月 29日
今日、日本カメラ博物館のオリンパス展の連動企画として米谷氏の講演があり参加してきた2時間の予定を30分以上超える熱演で、Penまでの話しを脱線しながら、お話しされた。Penの裏話的なものは目新しいものは無かったが、それ以外の所で興味深かったことを書く。 1.ビジョン、フィロソフィー、二つの壁 これは、人生についても考えて欲しいと言われた、氏がカメラ設計者として、或いは人生の師として何度か繰り返された言葉だ。人生を考える時、何か志を考える時、 ・先ず、ビジョン(夢)を持て ・ビジョンを持ったら、それを実現するためのフィロソフィーを持て ・そして進めば、必ず二つの壁にぶちあたる。それを乗り越える努力をしよう ・一つは、開発で言えば技術の壁(目に見える困難) ・そして、もうひとつは、目に見えない壁、「常識の壁」だ。 と言うものだ。 氏は、「漠然としていちゃあ駄目ですよ」と。大それたビジョンでなくても良い、例えば後数ヶ月の命と宣告されて死ぬまでにあれだけはしたい何て言うのが何一つ無いなんて言うのは無いでしょう。それで何でも良いから先ずビジョンを持てと。そしてそのビジョンに向かっていく為の自分の心構え、思想、よりどころとしてフィロソフィーを持てということだ。 そして、こうして進めば「必ず」壁にぶち当たると言うことだ、壁もなくうまくいくなんてものはないし、そもそも壁がないなんていうのはビジョンもフィロソフィーもない「漠然とした」生き方だと言うことだろう。 2.そして、オリンパスらしさ、 冒頭の雑談で、博物館のカメラに触れられた。カメラは不思議なものでキャノンならキャノン、ニコンならニコン、オリンパスならオリンパスのカラーというものを感じると言われた。そして、「私もオリンパスに入って設計を習った。(私も含め)設計者はカメラの設計は習っても、オリンパスらしいとか、オリンパスらしさなんてものは別に習ったり、そういう設計をしたわけではないのにね」「不思議なものですね」と言われた。 OMやPenは紛れもなく米谷氏の思想が脈打つカメラであるが、軽量小型を良しとする思想、本来のプロと言うよりも、写真愛好家受けするカメラ作り、進取の気性などはオリンパスのカメラに共通するものだ。 他社と何となく違うこのオリンパスらしさは私は、通常の会社毎のカラーといったものに加えてオリンパスのカメラ部門の特異性、カメラ部門立ち上げから長く、カメラ設計部門の責任者を勤めた桜井氏と桜井氏が見出した米谷氏という二人に負うところが大きいと思う。 桜井氏はベス単派から続く写真家集団光大派の主要メンバーの写真家としても有名でまた「写真としての芸術性を極めるためには時代性や話題を負わねばならぬ職業写真家でなく、むしろアマチュア写真家こそがベストである」と言われていた。ご自身も最後はオリンパスのカメラ設計部門の責任者→専務と上り詰める傍ら、終生写真に精進なされ数冊の写真集を残された方である。また、学生時代にとったちいさなカメラ関係の特許に着目し、エンジン専攻という精密工学と関係ない米谷氏を自ら見出しオリンパス入社まで口説き落とした方でもある。 そして、米谷氏も香川の醤油製造業者の息子として高校生からライカIIIfをあやつると言う大変恵まれた環境の中で学校の写真部のレベルでは飽きたらず、社会人のクラブに入り学生時代からカメラ雑誌にたびたび入選されたという経歴の持ち主。この時代に写真の面白さと同時に奥深さ、難しさを実感され、「これで食うのは無理だ。むしろ食い扶持は別にしてこれはこれでアマチュアで精進しよう」と思い、専攻は自動車関係にされたそうだ。 少し、横道にそれたが要は、オリンパスのカメラ部門(特に設計)の創業で、penの飛躍へつながるカメラ部門の基礎を築き、米谷氏の一番の後ろ盾であった桜井氏、そしてPen,OMへとつなげご自身も常務にまでなった米谷氏とカメラ部門を引っ張っていったキーパーソンが二人ともすぐれた設計者であると同時に、写真に深い理解と、愛情を持つハイレベルなアマチュア写真家であったところが、他社にないユニークなオリンパスらしさを形成した一因であると思う。 さて、これからのオリンパスはどうだろうか。桜井氏も、米谷氏もオリンパスの人間としてオリンパスのカメラを設計し、お二方のビジョン、フィロソフィーも包含しながら今のオリンパスらしさが形作られたとすれば、今もこれからもオリンパスらしさというのは少しずつ時代の空気を入れながらも続いていくものだと思う。例えば、進取の気性は何もカメラ部門だけでなく、パールコーダーや、オリンパスの大黒柱の胃カメラなども米谷氏曰く「あれだって、普通じゃあれを製品化しようなんてなかなか出来ませんよ」という話しだった。 オリンパスが言う「ブランドのイメージ」とはそういうものだろう。 また、話しは前後するが、フィロソフィーに基づいてカメラを作って生じる二つの壁の内、一つの技術の壁は、設計者自身が乗り越えるべき壁であると言われた。まあ当たり前のことであろう。前の懇談会の時の話しにも書いたが、米谷氏は設計者に市場のニーズも大事だが、先ず設計者自身が写真、カメラに深い理解、知識を有してその理想に向かって手を抜くことなく志の高いカメラを作ることを求められていた。そして、今日、もう一つの壁Penで言えばそんなものだめだと言う社内の常識の壁を突き破ってくれたのは、「これは、もうユーザーなんです。ユーザーが受け入れ信任してくれたからこそ、それを後ろ盾に突き破ることが出来た。」とはっきり言われた。 何でも、とにかくユーザーが求めるまま、売れればよいと言う志では良いカメラは出来ない、さりとて、最終的に継続してカメラが作られる為にはユーザーの力が必要だ、良いカメラ、革新的なカメラを作るための、二つの壁は両方が揃わないと突破出来ないということだろう。この二つが揃わないといけないが故に、設計者が描く理想の中にはユーザーの視点、深い理解が不可欠であるし、ユーザーもまた良いカメラを見極める、是々非々でメーカーに要望を言うという緊張関係が必要なのではと思う。車の両輪のようなものだろうか。 今のオリンパスのキャッチフレーズは、「Your Vision, Our Future」である。出来ればこの希有なカメラ設計者2名を中心に育まれた、ユニークなブランドが切り開いていく、ビジョンにカメラ、写真を趣味とするものとして、良い未来を重ね合わせていけるようになりたいものだ。
by Hiro_Sakae
| 2005-10-29 21:03
| その他オリ絡み
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