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2008年 09月 12日
新型αから見る、センサーシフト補正とライブビューの問題
  フルサイズαが出た。ソニーと言うより、ミノルタのαのフラッグシップ機という感じがしたが、既にお気づきの方もいるだろうが、ソニーはこの機種にいわゆる撮像素子によるライブビューを搭載しなかった。




  去年出たα700にもない。そして、現在αでのライブビュー搭載は全てペンタミラー型で撮像素子とは別のセンサーを搭載する形だ。(ペンタプリズムを使用している今回の新型α等にはこの方式は物理的に搭載できない。)かくして、二強プラス、ペンタ、ソニー、オリの中で唯一撮像素子によるライブビューを搭載していないメーカーとなった。

  これに関しては、デジカメジンのスレの中にもこれは技術的に困難だという指摘がなされている。私が今回これに注目したのは以前、オリンパスのライブビュー中のSSWFによるごみ取りの特許を書いた時にそれ以外にセンサーシフト補正のライブビューの難しさ等でメールをもらった際に示唆してもらったことと今回の話が重なるからだ。

  すなわち、撮像素子をライブビューする際にずっと通電することから来る熱ノイズをいかに防止するかと言うところだ。一つには撮像素子自体の問題が上げられる。実際、オリンパスにおいても、Live-MOSではライブビューが実現しているが、動画撮影もスペック的に可能なKAIでライブビューを搭載しなかった。実際にDSLR程度の大きさのセンサーと、求められる画質のレベルを考えれば、撮像素子の耐熱性能でライブビューが可能になるかどうかが分かれるとも言えよう。

  加えて、デジカメジンのスレでも指摘されているように、このノイズを避けるために放熱をしようとすると、レンズ補正式の場合撮像素子が固定されるため、ボディ側に放熱するのが比較的容易であるのに対して、ボディぶれ補正の方は原理上、レンズ補正式のような放熱効果が出しにくいため、より難易度が高くなると言うことだ。(すくなくともぶれ補正している以上はボディに放熱のために固定、固着した状態にはなり得ない。)

  従って、Pentaxはなんとかこれを行っているものの、APSのα700ですら、搭載出来なかったものをフルサイズでは尚更難しかったのではないかとおもうのである。

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  翻って、フォーサーズの場合はどうか。まず、絶対的に撮像素子が小さいことは熱対策としては圧倒的に有利である。また、撮像素子を取り巻く空間の余裕も(本来はテレセントリック性のためであるが、)撮像素子の大きさ対比十分な余裕がある。加えて背面の放熱と言うことでも、オリンパスの場合撮像素子補正とは言え、SSWFユニットまるごとの補正であるため、撮像素子に固着して放熱出来る面積も大きいと思える。そして、何よりもLive-MOS自体の優れた熱に対する強さがあるからだろう。
  
  従って、撮像素子の小ささ故にボディぶれ補正を行いながらも、撮像素子ライブビューを可能にしていると言える。

  もう一つ加えるなら、将来マイクロフォーサーズやこれに追随して他社がAPSのマイクロ版を作ってきた場合を想像して頂きたい。光学ファインダーが無いのであるからライブビューの時間は格段に増大する。オリンパスは、現在の電源ON時にSSWFでごみ取りをするのを進化させて、ライブビュー中にも一定時間もしくは明示的にSSWFでごみ取りするアイデアを特許に出している。

  静止画撮像の瞬間にSSWFをふるわせるのは撮像に影響が出るが、ライブビュー中にSSWFをぷるぷるさせることによるライブビュー画像のぶれの影響というのは極めて軽微なようである。そして、これを他社がやるとなれば、一つ問題が出てくる。例えばキヤノンや、ニコンのようにローパスフィルターを振動させる形式であれば、オリンパスと同様に出来るのかも知れない。しかし、ペンタックスとソニーのようにぶれ補正駆動を使って撮像素子自体をぷるぷるさせる方式ではこれをライブビュー中に駆動すると明らかにライブビュー画像も「ぷるぷる」揺れてしまうことになると思うのだ。

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 オリンパスはフォーサーズという撮像素子にいきつくまでに、フォーサーズストーリーなどをみると長い時間を掛け、DSLRシステムとして発展させていくためにあのサイズに帰着したようである。テレセントリック性等もさることながら、例えば、SSWFを入れるスペースの問題、同様にぶれ補正を入れるスペース、そして今回のライブビューの搭載とこれらの両立のクリアーや、マイクロへの展開を見ると、まるで、「これらもすべて予見した上で、あの小ささにしたのか?」とすら思える時がある。

  また、この辺まで考えを及ばせると、一見光学ファインダーが無くなって参入障壁が低くなった、或いは取っ払うだけだから他社もすぐ追随すると思えるマイクロフォーサーズも恐らくオリ、パナが考えるレベルまで早晩追いつけないような潜在的アドバンテージを持っているのではないかとすら思えるのである。

  尤も、個人的には今回の様なαのコンセプトは値段と性能のバランスから言っても非常に興味のそそられるところだ。これがOMマウントなら私も1にも2にもなく買ったことだろう。(笑)しかし、うまくいえないが、フィルムがソニーの撮像素子とBIONZに変わっただけで煮詰めて言っている技術の延長線は、従来のミノルタのα(フィルム一眼レフ)のそれをまっすぐに伸ばした感が否めない。改めてソニーで世に問うDSLR時代の新システムのフラッグシップというイメージからは少しはずれている。思想的にはフォーサーズと対極にあるような気がした。

  確かにこういう延長線上に煮詰められるDSLRの方が今のレベルで行けばフォーサーズより良いものかも知れない。しかし、以前ここにも書いたが、どんなにしょぼいロケットでもいつかは宇宙に突き抜ける可能性はあるが、飛行機はどんなに優秀であっても、宇宙に羽ばたくことはあり得ないのである。どちらが良いか悪いかでなく、コンセプトの違いだろう。何れフルサイズも安くなればどっちがどっちでなく、両方使える時が来るかも知れない。私はそうなれば尚更、フォーサーズをメインにし、フルサイズをサブにしようかなと思うだけだ。

by Hiro_Sakae | 2008-09-12 00:09 | 未発表機種/他社動向


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